シュリンクフレーションって何?ステルス値上げとどう違う?消費者に知らされない実態とは!

話題と考察

シュリンクフレーションとは何か?基本的な定義を解説

シュリンクフレーションとは、商品の価格を据え置きながら、その内容量や大きさを減らすことで実質的な値上げを行う企業の戦略を指します。この用語は「shrink(縮小する)」と「inflation(インフレーション)」を組み合わせた造語です。

具体的には以下のような形で行われます。

  • 商品のパッケージサイズを小さくする
  • 内容量を減らす
  • 製品の質を落とす(例:より安価な原材料を使用する)

重要なポイントは、これらの変更が行われる際に、商品の価格は変わらないか、あるいはわずかな変更にとどまることです。
そのため、消費者は一見すると同じ価格で同じ商品を購入しているように感じますが、実際には単位あたりの価格が上昇しています。

シュリンクフレーションは、以下のような理由で企業にとって魅力的な戦略となっています。

  • 多くの消費者は商品の価格に敏感ですが、内容量の変化には比較的気づきにくい傾向があります。

  • 競合他社との価格競争を避けつつ、利益を確保できます。

  • 原材料費や人件費の上昇に対して、直接的な値上げを避けることができます。

  • 消費者は同じ価格で購入できることでブランドへの信頼を維持しやすくなります。

ただし、シュリンクフレーションは消費者にとっては不利益となる可能性が高く、企業の透明性や誠実さを問う声も上がっています

「シュリンクフレーション」と「ステルス値上げ」の違いは?

「シュリンクフレーション」と「ステルス値上げ」は、どちらも消費者に気づかれにくい形で実質的な値上げを行う手法ですが、その実施方法と特徴に違いがあります。以下、両者の違いを詳しく解説します。

比較項目 シュリンクフレーション ステルス値上げ
定義の違い 商品の価格を据え置きながら、内容量や大きさを減らすことで実質的な値上げを行う手法 商品の価格を直接的に上げるものの、消費者に気づかれにくい方法で実施する値上げ手法
実施方法の違い

・商品の内容量を減らす
・パッケージサイズを小さくする
・製品の質を下げる

・少額ずつ段階的に値上げする
・新商品として発売し、価格を上げる
・セール頻度や割引率を減らす
・付属品や特典を減らす
価格表示の違い 商品の価格自体は変更せず、内容量や質を変更するため、店頭での価格表示は変わらない 実際の価格は上昇するが、段階的な少額値上げや、新商品としての投入などにより、上昇を目立たせない工夫をする
消費者の気づきやすさ 価格が変わらないため、消費者は気づきにくい 注意深い消費者であれば気づく可能性があるが、段階的な値上げや新商品としての投入などにより、気づきにくい
法的・倫理的側面 内容量の変更を明示していれば法的には問題ないが、消費者への十分な説明がない場合、倫理的な問題が指摘されることがある 価格自体を変更するため、適切に表示されていれば法的問題は少ないが、消費者を意図的に欺くような手法は問題視される可能性がある
企業のリスク 内容量変更が露見した場合、消費者の信頼を大きく損なう可能性がある 段階的な値上げであれば比較的リスクは低いが、新商品としての投入などが消費者に見抜かれた場合、批判を受ける可能性がある

なぜシュリンクフレーションが発生するのか?その理由とは?

シュリンクフレーションが発生する理由は、企業側の事情と消費者心理の両面から多岐にわたります。以下にその主な理由をまとめました。

コスト上昇への対応

  1. 原材料費の高騰

    • 原油価格や農作物の不作により原材料費が上昇すると、企業は製品の量を減らしてコストを抑えます。
  2. 人件費の上昇

    • 最低賃金の引き上げや労働力不足による賃金上昇が製造コストを押し上げるため、製品量を減らして対応します。
  3. エネルギーコストの増加

    • 電気代や燃料費の上昇が製造コストに影響するため、製品量を調整してコストを抑えます。

競争力の維持

  1. 価格競争の回避

    • 価格を維持しながら内容量を減らし、利益を確保します。
  2. 市場シェアの保持

    • 価格を上げると市場シェアを失うリスクがあるため、内容量を減らして実質的な値上げを行います。

消費者心理への配慮

  1. 価格感度への対応

    • 消費者は価格に敏感ですが、内容量の変化には気づきにくいため、価格を据え置きつつ内容量を減らします。
  2. 心理的価格帯の維持

    • 100円や1000円などの心理的価格帯を維持するため、内容量を調整します。

経営戦略としての選択

  1. 利益率の改善

    • 株主からの圧力や経営目標達成のため、シュリンクフレーションで利益率を改善します。
  2. 新製品開発コストの捻出

    • 新製品の研究開発費を確保するため、既存製品の内容量を減らします。

包装・輸送コストの最適化

  1. 包装材料の節約

    • パッケージサイズを小さくして包装材料のコストを削減します。
  2. 輸送効率の向上

    • 商品サイズを小さくして輸送時の積載効率を上げ、輸送コストを削減します。

消費トレンドへの対応

  1. 健康志向への対応

    • 健康志向の消費者ニーズに応え、カロリー控えめや小分け包装とすることで内容量を減らします。
  2. 環境配慮の姿勢

    • 環境負荷を減らすため、包装を小さくし内容量を減らします。

規制への対応

  1. 税制変更への対応

    • 消費税率の引き上げなどに対応し、内容量を調整します。
  2. 食品表示法への対応

    • 栄養成分表示の義務化に伴い、表示値を維持するため内容量を調整します。

 

シュリンクフレーションが消費者に与える影響は?

シュリンクフレーションは、一見気づきにくいものの、消費者に大きな影響を及ぼします。

経済的影響

1. 実質的な出費増加

  • 商品の量が減るのに価格は変わらないため、実質的に消費者の出費は増えます。例えば、300gの商品が250gになっても価格が同じなら、同じ量を得るために多くの金額を支払うことになります。

2. 家計への負担

  • 特に日用品や食料品でシュリンクフレーションが起きると、家計への負担が増します。低所得者層や固定収入の高齢者にとっては深刻な問題です。

3. 購買力の低下

  • 同じ金額で少ない量しか買えなくなるため、消費者の実質的な購買力が低下し、生活水準の低下につながる可能性があります。

心理的影響

1. 不信感の醸成

  • シュリンクフレーションに気づいた消費者は、企業に対して不信感を抱くことがあります。特に、内容量の変更が告知されていない場合は「欺かれた」と感じるでしょう。

2. ブランドロイヤルティの低下

  • お気に入りの商品がシュリンクフレーションの対象になると、そのブランドへの信頼や愛着が薄れる可能性があります。これが長期的には企業にとってマイナスとなります。

3. 購買行動の変化

  • 消費者はより慎重に商品を選び、他のブランドや代替品に切り替えることがあります。

健康・栄養面への影響

1. 栄養摂取量の変化

  • 食品のシュリンクフレーションにより、知らないうちに栄養摂取量が減る可能性があります。特にバランスの取れた食事を心がける人には問題です。

環境への影響

1. ゴミの増加

  • 内容量が減っても包装サイズが変わらない場合、より多くの包装材が必要となり、ゴミの量が増えます。

2. 資源の無駄遣い

  • より頻繁に商品を購入する必要が生じることで、製造や輸送に関わるエネルギー消費が増え、環境負荷が高まります。

消費行動の変化

1. 比較購買の増加

  • シュリンクフレーションへの意識が高まり、消費者はより詳細に商品を比較するようになります。

2. 大量購入の増加

  • 内容量の減少に対抗するため、大容量パックや業務用サイズの商品を選ぶ消費者が増えるかもしれません。

3. DIYや手作りの増加

  • 既製品の内容量減少や品質低下に不満を感じた消費者が、自家製品やDIY製品を選ぶようになる可能性があります。

社会的影響

1. 消費者意識の向上

  • シュリンクフレーションへの認識が広まることで、消費者の権利意識や企業の社会的責任に対する関心が高まります。

2. 政策への影響

  • 消費者保護の観点から、シュリンクフレーションに関する規制や情報開示の要求が高まる可能性があります。

ステルス値上げの実態とは?具体的な事例を紹介

内容量の減少

最も一般的なステルス値上げの手法の一つが、内容量を減らすことです。

事例1:菓子メーカーのポテトチップス
ある大手菓子メーカーは、ポテトチップスの内容量を100gから90gに減らしましたが、価格は据え置きました。パッケージのデザインはほぼ同じで、内容量の変更は小さな文字で記載されただけでした。

事例2:飲料メーカーのペットボトル飲料
大手飲料メーカーは、500mlペットボトルの炭酸飲料を485mlに減量しました。ボトルの形状はほとんど変わらず、価格も同じままでした。

原材料の変更

高品質な原材料をより安価なものに置き換えることで、コストを抑えつつ価格を維持する手法です。

事例3:チョコレートメーカーのカカオバター代替
ある製菓会社は、チョコレート製品のカカオバターの一部を植物油脂に置き換えました。味や食感の変化を最小限に抑えつつ、製造コストを削減しました。

事例4:惣菜の具材変更
コンビニエンスストアのおにぎりで、従来使用していた国産米の一部を輸入米に変更し、具材の量も微妙に減らしました。価格は据え置きのまま、利益率を改善しました。

パッケージの変更

パッケージを変更することで、内容量の減少を目立たなくする手法です。

事例5:洗剤メーカーのボトル形状変更
大手洗剤メーカーは、液体洗剤のボトルデザインを変更し、底部を少し凹ませることで内容量を減らしました。新しいデザインという名目で、実質的な値上げを行いました。

事例6:アイスクリームの容器変更
アイスクリームメーカーは、円筒形の容器を底部が少し盛り上がった形状に変更しました。見た目の大きさはほとんど変わりませんが、実際の内容量は減少しました。

サービスの質の低下

商品だけでなく、サービス業界でもステルス値上げは行われています。

事例7:航空会社の座席間隔縮小
ある航空会社は、機内の座席間隔を縮小し、同じ機体により多くの座席を詰め込みました。チケット価格は変わらないものの、乗客一人当たりのスペースは減少しました。

事例8:ホテルの清掃サービス削減
一部のホテルチェーンでは、連泊客向けの毎日の清掃サービスを廃止し、リクエストベースに変更しました。宿泊料金は据え置きのまま、サービスの質を下げることでコストを削減しました。

付属品や特典の削減

本体価格を維持しつつ、付属品や特典を減らすことで実質的な値上げを行う手法です。

事例9:家電メーカーの付属品削減
テレビメーカーは、4K対応テレビの価格を据え置きましたが、以前は付属していたHDMIケーブルを別売りにしました。

事例10:携帯電話の充電器別売り
スマートフォンメーカーは、環境保護を理由に新機種から充電器の同梱を取りやめました。本体価格は変わらないものの、充電器を別途購入する必要が生じました。

割引の縮小や廃止

従来提供していた割引を縮小または廃止することで、実質的な値上げを行う手法です。

事例11:スーパーのポイント還元率低下
大手スーパーチェーンは、ポイントカードの還元率を1%から0.5%に引き下げました。商品の表示価格は変わりませんが、実質的にはポイント分の値上げとなりました。

事例12:飲食店のクーポン廃止
ファストフードチェーンが、定期的に配布していた割引クーポンの発行を中止しました。メニュー価格は変わりませんが、実質的な支払額が増加しました。

これらの事例から分かるように、ステルス値上げは様々な形で行われており、消費者が気づきにくい工夫がなされています。企業にとっては短期的なコスト削減や利益確保の手段となりますが、長期的には消費者の信頼を損なう可能性があります。

 

消費者が知っておくべきシュリンクフレーションの兆候とは?対策はある?

シュリンクフレーションは巧妙に行われるため、気づきにくいのが特徴です。しかし、注意深く観察することで、その兆候を見抜くことができます。以下に、消費者が知っておくべきシュリンクフレーションの主な兆候を詳しく解説します。

パッケージデザインの変更

シュリンクフレーションの最も一般的な兆候の一つが、パッケージデザインの変更です。

  • 新パッケージ」や「リニューアル」といった表記に注目しましょう。
  • パッケージの形状が微妙に変わっている場合があります。例えば、底部が少し凹んでいたり、角が丸くなっていたりすることがあります。
  • 色使いや素材が変わっていることもあります。例えば、透明な部分が減ったり、逆に増えたりする場合があります。 
内容量の表記位置の変化
  • 内容量の表記が、パッケージの裏側や底部など、見つけにくい場所に移動していないか確認しましょう。
  • 内容量の表記の、フォントサイズが小さくなっていたり、色が目立たなくなっていたりすることがあります。  
「お得」や「増量」といった表記の登場

逆説的ですが、「お得」や「増量」といった表記が突然現れる場合があります。

  • これらの表記は、実際には以前の通常サイズに戻しただけの場合があります。
  • 「20%増量」などの表記がある場合、以前の内容量と比較して本当に増量されているか確認しましょう。
製品の形状や大きさの微妙な変化

製品自体の形状や大きさが変わることで、内容量を減らす場合があります。

  • 例えば、チョコレートバーの厚さが薄くなったり、ビスケットの直径が小さくなったりすることがあります。
  • 個包装の製品の場合、1パック当たりの個数が減っていないか確認しましょう。
価格の微調整

価格自体は大きく変わらないものの、微妙に調整されていることがあります。

  • 例えば、98円だった商品が100円になるなど、小さな価格変更に注意しましょう。
  • セール時の割引率が以前より小さくなっていることもあります。
原材料リストの変更
  • 原材料リストの順序が変わっていないか確認しましょう。原材料は使用量の多い順に記載されるため、順序の変更は配合比の変更を示唆します。
  • 新しい原材料(特に増量剤や代替品)が追加されていないか確認しましょう。
製品ラインナップの変更

既存の製品が姿を消し、似て非なる新製品が登場することがあります。

  • 「新製品」として登場した商品が、実は内容量を減らした従来品の後継である可能性があります。
  • 製品名が微妙に変更されている場合(例:「スーパー」が付いたり、「DX」が付いたりする)は特に注意が必要です。
販売単位の変更
  • 例えば、6個入りパックが5個入りになるなど、パック当たりの数量が減少していないか確認しましょう。
  • 重量ベースの販売から個数ベースの販売に変更されるなど、販売方法自体が変わることもあります。
季節限定商品の登場

通常商品の内容量を減らす代わりに、「期間限定」や「季節限定」として、以前の内容量の商品を高価格で販売することがあります。

  • これらの限定商品と通常商品の内容量と価格を比較してみましょう。
  • 限定商品が恒常化していないか、注意深く観察しましょう。

まとめ

シュリンクフレーションとは、商品の価格をそのままに、内容量や品質を下げて、実質的に値上げを行う企業の戦略です。原材料費の上昇や競争激化といった背景から行われますが、消費者は気づきにくく、家計への負担が増える可能性があります。

参考サイト:
三菱UFJ銀行「ステルス値上げ」の意味や背景は?個人ができる対策で物価上昇に備えよう
ダイヤモンド・オンライン「ステルス値上げ」は炎上必至、消費者も納得する値上げの極意とは

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